どことなく似た声に驚いて顔を上げる。
「その子、満の連れだってよ。
親父と話しててもつまんないよ。
ほら、おいで。」
満はそんなふうに笑わない。
この人はどうして無理に笑うんだろう?
仮面をつけてるみたいなこの人が怖い。
警戒心むき出しでおじさんの後ろに隠れた。
「お嬢さんはまだ話を聞きたいそうだよ。
先に戻ってなさい。」
おじさんの言葉に首を縦に振ると、
「それならいいんだけどね。」
眉を下げて言う彼はすぅっと居なくなった。
「すいませんな。あれは家の長男坊でして。」
「いえ、あ、あの、満とは?」
「兄弟ですよ。」
やっぱりって思ったけど、口にはもちろん
出さなかった。
「満のお兄さんなんですか?」
「ええ。そうですよ。まぁ、しっかりしてる
のは満の方ですがね。」
そうか。
今、分かった。
このどこか知らないお屋敷は、
満のご実家なんだ。
何も持ってきてないし、すごく
失礼だったんじゃないかな。
「すいません、何も持ってきてなくて。」
「いいんだよ。ほら、顔上げて。」
失礼なことして恥ずかしくなった。
「お嬢さんみたいな子が満のお友達で
嬉しいと思ってたんだ。だから、気にせず
ゆっくり休むといいよ。」
おじさんは柔らかく笑う。
満の雰囲気に似たおじさんは満のお父さん
なんだろう。
すごく羨ましい。
私も彼みたいな父親が欲しかった。
出来ることならこの家に生まれたかった。
私はやっぱりまだ受け入れられてない。
ホントは普通に家族が居て当たり前だって
そんなふうに思えたら良かった。