「お前ら!!」
「桐は、羞恥って言葉が知らないんじゃないの?」
「はぁ?」
「ほら、分かってない?」
「漢字すら知らないんだよ。」
湊が的確なことを言うから納得する。
「あのな!!」
「桐、怒ってんの?」
「はぁ?」
「怒ってんだ?」
「おこ、怒ってねぇ。」
「嘘だね。」
「嘘なんて吐かねぇし。」
「さぁ?分からないよ。」
そういう人こそ、嘘が上手だったりする。
「桐は、鈴に嘘吐いたりしないよ。」
湊の手を繋いでる。
それってこんなに落ち着くことだったっけ?
「知ってる。」
本音こそ、言えない。
言葉こそ、吐き出すのに苦労する。
私を突き放すようなことしない。
私が呆然とする両親の喧嘩現場でも
桐は自分の事のように怒ってくれた。
私が諦めていることなんて分からないで、
私が涙も流せないことにも気付かないで、
私を怒ってくれた。
言葉すら、思いつかない。
桐はいつも私の想像を超える。
きっと、桐は私の痛みを自分の事の
ように考えてくれてるんだと思う。
「分かってねぇな。」
桐がそっと振り返る。
「ん?」
「俺ほど、正しく生きてるヤツ居ねぇよ。」
きっと、それ以上に私より痛みを知ってる
人なのかもしれない。
湊の隣から見える桐の振り向いた顔は
すぐに元に戻る。
でも、明らかに苦しげに見えたその顔は
きっと桐の心の状況だったのかもしれない。