湊は結局私の意志をいつも尊重してくれた。

「鈴は俺を美化し過ぎなんだ。」

湊の瞳が冷たいく突き刺さる。

「美化?」

湊の腕に吸い込まれるように引き寄せられて、

「鈴を誰にも捕られたくないって思ってる

って知ってもそう言ってくれる?」

悲しそうに湊が呟いた。

どうしたって、私には湊がご主人さまで、

戸惑いがちに湊の頭に触れる。

「湊がそう思うなら。」

「俺と一緒に居てくれる?」

「いいよ。湊の傍に居る。」

弱弱しく吐く言葉を私が受け止められる

なら何だってしたいって思った。

「鈴・・」

「どこにも行かないよ。湊の傍に

居る。」

心配してくれるなら心配させないように

したいって思う。

変化を知ったとしても動けない私は

ただ臆病に時を待った。

「おうっ、湊来たのかってお前ら

余所でやれ。」

呆れたように言う桐に湊がスッと

離れていくから名残惜しくその場に

立ち尽くした。

ブツブツ文句を言う、桐を宥めながら

湊が左手を差し出す。

そっとそれを右手で包み込んで、馬鹿

騒ぎする桐を見つめた。

「ほら、鈴が桐のこと冷めた目で見てるよ。」

「はぁっ?」

「早く、行こうよ。」

冷めた目でじゃなくて、恥ずかしんだ。

人がこっちを見てる。

桐は大の大人だ。

いつまでも駄々をこねる子ども的な

ことしないでさっさと行けと思ってるんだ。

全くどうにもならない人だ