「弱いの?」

どうってことないように見える桐がどこか

脆く見えた。

「鈴ちゃんは、強ぇよな。」

煙草を持ったまま遠くを見る桐はどこか悲しそう

に見えて、怖くなった。

「桐?」

どこかに行っちゃいそうなほどの桐に怖くなった。

「その強さ俺にはない。」

いつもは馬鹿じゃないのってぐらい騒ぐのに、

笑ってるのも桐らしくて桐が笑ってくれると

安心するのに。

どうして、そんな顔するんだろう。

「私だって、強くないよ。」

いつも殻に閉じこもってる私は桐みたいに

笑えない。

「俺はさ、男のくせに鈴みたいな立場だったら

耐えられないだろうから。」

小さく笑う桐に違和感を覚えた。

「桐?」

「鈴、」

桐がお菓子を手にしながらにっと笑う。

「俺は、愛してんぞ。」

「はぁ?」

「何だよ、冷たいなぁ。」

桐の動きががスローモーションに見えて、

「桐・・・?」

「鈴の過去すら愛おしく思う。」

真剣な眼差しに言葉すら出ない。

桐の手が髪に触れる。

スッと流すように梳く桐を見つめる。

「誰が親だろうと、鈴は鈴だ。

俺の見た鈴は今の鈴でしかない。

泣かせるヤツが居るなら俺が慰めて

やってもいい。」

だから・・・

「1人で泣くなよ。」

世界にたった一人取り残されても、

生きていけるって思った過去の私は

まだ世界の大きさを知らなかった。