煙草を吸ったことのない立場の私から

見ると、煙草なんて煙たくなるだけの

もので決して吸ってみたいと思う代物

じゃない。

「煙草に興味があんのか?」

煙草の銘柄とかって種類豊富だって

今更分かった。

「別に。」

「吸ってみたいわけ?」

桐はとくに興味なさそうなのに

そんなことを聞いてくる。

「吸いたくない。」

吸ってる人を否定するわけじゃない。

でも、吸ってること自体をいいと思え

ない。

人のこととかちゃんと考えてるのか

自分勝手に見えてしまう。

「あ。それでいいと思う。」

レジ担当の人に銘柄名を口にする

桐は煙草を睨んでた。

「それでいい?」

「吸ってると依存するからな。」

「依存?」

依存って止められなくなるっていう

言葉通りそれがないと駄目になるって

いつだったかお兄ちゃんが言ってた。

別にお兄ちゃんが煙草を吸ってたわけ

でもないけど、お兄ちゃんの友達が

吸ってたからよくその友達に言ってた

のを聞いてたから覚えてるのだろう。

「1度知ったら止められなくなる。」

「どうしても?」

「気持ちが強けりゃ止められる。」

「桐は気持ちが強いの?」

レジ担当の人が桐に恐る恐る煙草を

差し出す。

「弱いって言えば弱いだろうけど、

強い方なんじゃん?」

分かってなさげに言う桐は煙草を

手にしてから店内を見渡した。