「何か買うものとかあるなら今のうちだぞ。」

「とくにない。」

桐が私に向かって言う。

寄るも何も私は別に欲しいものない。

「桐、あるなら行って来な。」

湊が呆れ笑いしながら桐を見る。

「桐、私があると思ったの?」

俺はとくにねぇよって明らかに

あるように言うから私が助け舟出す。

私、別に欲しいものがあったとかじゃない

けど、桐をほっとくと可哀相だったという

気まぐれな発想で助け舟出しちゃった。

「ったく。危うく来れねぇとこだった。」

ったくって私のセリフなんだけど。

2人で並んで近くのコンビニまでを歩く。

ちょっと、離れたところにある車は

窓が全開で不恰好だった。

「桐、何買うの?」

助けたはいいけど何買う予定なの?

「煙草。」

桐って煙草吸うんだね。

「満も吸ってたよね?」

出会った時に煙を異様に放った満を

思い出す。

「ん、そうだな。満の買わねぇと。」

桐の後にコンビニの中に入る。

冷たい冷房の風が肌を刺す。

熱いところから急に冷たいところ

に入ると寒くなる。

「桐、ホントに吸ってる?」

「俺は昔止めた。」

桐から煙草の匂いがするって

ことはなかった気がする。

たまに、服から匂いが漂うことが

あっても桐自体は吸ってないって

イメージがあったのかもしれない。

「今は、吸ってないんだ?」

禁煙って大変だって誰か言ってたような

気がする。

いざ、自分が止める立場にならないと

分からない。