眠ってるだけのお姫様とまるで変わらない。

おとぎ話のような王子様は私に居ない。

そんなの頼らなくても自分で動かなくちゃ

駄目だったのにそれが出来ない私。

「鈴、俺は一度アメリカに戻らなくちゃ

ならないんだ。でも、すぐ戻って来るつもりだから。

その時は一緒に暮らそう。」

お兄ちゃんの匂いは昔から変わらない清潔な匂いで、

せっけんっぽいその香りが薄くなるにつれお兄ちゃん

の後ろ姿が遠くへと行った。

戻ってきたらすぐに電話するから鈴のしたいように

すればいい。

俺は一緒に暮らしたいと思ってる。

それでも鈴の気持ち通りにしたい。

そう言うばかりで私を優先するくせとか

全く変わらなくて。

「鈴、おいで。」

湊への感情で戸惑ってばかりの私をこれでもかって

ぐらい砕けさせる。

「湊、ごめんなさい。」

全部が湊のおかげで。

今こうやって自分の気持ちが言えたことも

背中を押してくれたのは湊。

「ごめんなさい、ごめんなさい。」

そうしか言えないのは少しでも湊に言えば

良かったって後悔が残ってるから。

「鈴、頑張ったね。」

そうやって甘やかしてくれるのも

私の気持ちを見透かしてるからで、

「湊・・・」

「うん?」

「桐ッ!!」

「な、なな何だよ!?」

「尚」

「ん?」

「満?」

「どうした?」

「あの人が私のお兄ちゃん。」

あの人が私のたった1人の家族。

わたしの全てと言っても過言じゃない。