私に無償の愛をくれる人っていうのはずっと
お兄ちゃんだけだとばかり思ってたから、
初めて、会っただけの私を包み込んでくれる
ような人に会えたのは湊以外に居ないんだ。
愛して欲しいというよりは包みこんでくれる
優しさにしがみ付きたかった。
1人でなんて生きていけないのは分かりきってた。
自分でも分かってるんだ。
それをどこか望んで家を出た私に本当の温かさを
温もりという名の愛をくれるのは湊で、湊に会えた
から桐にも満にも会えたわけで湊なしで今の私は
居ない。
「ごめん、ごめん、鈴。」
「お兄ちゃんが悪いわけじゃない。
悪いのは私なの。私が全部悪くて
お兄ちゃんはちっとも悪くない。」
空っぽになるぐらい心の中全部みんな
感情ってものを失くした。
失ったものを取り戻すのは簡単なこと
じゃなくて手放したものはもう二度と
戻って来るわけじゃない。
「鈴は悪くないよ。」
「お兄ちゃんが誰よりも大事なのは今も
昔も変わらないよ。」
それでもきっとお兄ちゃんは違う。
お兄ちゃんしか居ない私はいつも
どこかで頼ってばかりだった。
「俺が悪いんだッ。」
「大切にしてくれるって気持ちが
あるだけで生きてるって気がした。」
ただ幸せになりたかっただけ。
小さな幸せしか願わない。
大きな幸せなんて要らない。
「鈴」
「いつか迎えに来てくれるってそれだけを
生きる支えにしてたのは私が臆病だからだよ。」
自分から行かずに待つだけなんてこと
一番駄目な私。
動かなくちゃ誰も幸せにしてくれないのに。
ただ待つだけの私はまるでおとぎ話だ。