「お兄ちゃん・・・苦しんだけど?」

お兄ちゃんの友人はよくお兄ちゃんを変わった

人だって言っていた。

「鈴、元気だった?」

「うん。元気だよ。」

久々の再会はあっけないものだった。

こんなふうに思えるのはお兄ちゃんと

ちゃんと再会できたからだ。

もし、あのままだったらとんでもなく後悔

をしただろう。

「あのね、お兄ちゃん今この人のお家に

住んでるの。」

湊を見つめるお兄ちゃんの視線が気になって

すぐさま付け足すように言った。

「鈴がお世話になってます。」

「気遣いなさらないでください。

僕も1人暮らしですからたまたま声を

かけただけなんですよ。」

湊の滲み出る優しさにどうしようもなく

胸が苦しくなった。

温かいはずなのに胸がぐっと痛くなる。

「鈴、俺はね鈴が出て行ったって聞いて

飛んで帰ってきたんだ。」

お兄ちゃんの顔が見れなくなる。

きっと悲しい顔してる。

お母さんもお父さんも仲良くないのは

私のせいだから。

「ずっと辛かったのは鈴だよね。

俺が居ない間、鈴はずっと待ってくれてた?」

「待ちくたびれたよ。」

もうどうにでもなればいいって思って

あの日湊に拾われた。

それから、きっともう2度とお兄ちゃんには

会わないだろうと諦めてた。

どこかで幸せに暮らしてくれればと投げやり

になっていたのかもしれない。

「鈴のことどこか平気で暮らせてるんだって

思ってたところもあるんだ。」

お兄ちゃんの瞳がさらに暗さを増す。

私のことでそんなに自分を責めなくてもいいのに。