「渉くん!!」

能内では満面の笑みで渉くんが出迎えてくれていたが、虚しくもその姿はなかった。

……留守か。

沈んだ気持ちでミュールを脱ぎ、リビングのドアを開けた………

「ぎゃっ!?」

目のまえの光景に驚き、おもわず変な声が漏れる。

見知らぬ女がリビングのソファーに座り、そーめんをすすっている。
ジャージにぼさぼさな髪で。

女の視線が私に突き刺さる。その目はどこか虚ろだった。

「……だれ?」

低いトーンで女。

こっちの台詞です。といいたいが、頭が混乱してうまく言葉がでてこない。

「……鍵閉めてるはずだけど」

部屋間違えた?いや、それはない。
泥棒?!いや、泥棒が人ん家でそーめん食うか?

ぐるぐるぐるぐる回る頭の中。

「……勝手に人の家に上がらないでもらえます?」

淡々と言うこの女の一言が、私に冷たい現実を突き付けた。


…………騙された!!!