ぼくは、ぼくらは、
死の恐怖から逃れるかのように、
しっかりと抱きしめ合った。


部屋の外には、蕾をつけた桜の木があった。


震えるアズミをあたためるために、
ぼくはていねいに蕾をひらくように、
彼女をほどいていった。


「亮平」とアズミがつぶやく。
ぼくは、彼女の唇に優しく口づける。


蕾のなかには、白く染まったアズミの肌が、
小さくひろがっていた。


ぼくの大きな胸をそこに重ねると、
ふたりの鼓動がどくんと共鳴した。


大丈夫、ぼくらは生きている。
なにも心配することはないよ、アズミ。


このままふたりで死んでしまっても、
地獄へ堕ちたりなんかしない。