アズミが発案した緊急電話(エマージェンシーコール)は、意外と早く使われることになった。 アズミが、父親に殴られて怪我をしたのだ。 ――それは大雨の晩のことだった。 アズミは濡れた髪で、ぼくの部屋に逃げてきた。 寒さでブルブル震えている。 ぼくは彼女に、転がっていたタオルと毛布をかけて、冷蔵庫にあった牛乳をマグカップに入れて温めて出してやった。