「おけ。じゃ、作業療法室だな」


ぼくらは、病院で診察券を出すと、
すぐに作業療法室へ入っていった。

そこには、まばらに人がいたが、
治療時間外だからかまわないだろうと、ぼくは思った。


「なにがいい?」
部屋のすみにあったギターを取り出して、
ぼくはアズミに尋ねた。

「このまえのやつ」

「えっ?また”禁じられた遊び”?
いいけど、しぶい曲好みだねー」

「あれから、あの映画観てみたんだ」

「へえ」

「もうびっくり。すごーーく泣いた。
ラストがかわいそすぎる」

「そっか。
じゃあ、ぼくのギターで、もひとつ、
泣かせてあげましょう」