「うん。ありがと」
アズミは嬉しそうだった。

「下手なギターを聴かせてやるから。
仲間もいるしな」

「うん」


ぼくは、アズミのメアドを聞きたくてたまらなかったのだが、アズミが、「そろそろ帰らなきゃ」と言い出したので、チャンスを逃してしまった。

まあ、いい。
彼女が、チャットルームに来れば、
いつだってそれは聞けるんだから。


「じゃ、送っていこうか?」

「いい、いい。すぐ近くだから」

「アズミ、気をつけてな」

「亮平もね。おやすみ」

「おやすみ」


こうして、ぼくらはコンビニの前で
手を振って別れた。

アズミのそのときの柔らかな手つきを、
ぼくは決して忘れない。