「さっきもわたし、
ケンカを止めようとしただけなのに…」

アズミはファッション雑誌を
横目で見ながら、ため息をついた。


「イギリスに留学してた頃はよかったなぁ…。
たった1年間だけど。
帰ってきてから、家のなか、
ますます冷え切っちゃっててさー」


「イギリスに留学してたんだ?」


「お父さんから逃げるためにね。
だからわたし、英語は話せるよ」


「へぇ、かっこいい」


「どうでもいいよ、そんなこと」


アズミはさらに続けて言った。

「とにかく、お父さんの教育は、
殴ったり何時間も正座させたり、
わけわかんないの。

わたし、もう我慢できなくってさ」