信号が青になった時にはもう、わたしは歩き出していた。アラやだ、せっかちさんね、わたしも。

彼は動かない。
距離は着々と縮まる。


縮まる。


迫る。






「愛してる」


すれ違い様に、彼へ届くよう囁いた。

「――ッ……!」


彼の喉がヒュッてなった!

わたしへの恐怖に、ヒュッてわたしの大好きな声がわたしがまだ触れたこともない、開かないと届かない彼の体の中へ引っ込んだわ!





可愛らしいひと。
愛しいひと!


ほら、また数日後、また会いに来てあげる。
恐怖を植え付けてあげる。



「、ふ…ふふふっ」


ああ、いけない。
声に出してはだめよ、わたし。
だから、心の中で……








ふふふふふふフフフふふふふフフフフフフふふふフフフふふふフフフ怖怖怖怖ふふふふふふフフフふふふフフフ怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖ふ怖怖怖怖怖怖怖怖フ怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖怖ッ!