センター街はやっぱりわやこちゃしてるわ。
人が、車が、はたまた鳥といったものがそれぞれの意思をもって行き交うその様は、まるで街に動脈と静脈ができたみたい。
もみじやイチョウといった風物詩が、ひんやりと肌を撫でてく風に揺らされながら落ちて、煉瓦畳の地面をカラフルに塗り替える。
こんな時、あなたと歩いた日々を思い出す。
からかえば照れたふうに目尻を微かに赤くしてそっぽ向いてしまうあなたが愛しい。
気が向く時にしか言わない、あなたの“好き”が愛しい。
節ばった指先が、優しげな眼差しが、堅くしなやかな髪が、好きなんて言葉じゃ足りないぐらい愛しい。
別れてしまったいまでも愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて。
人は過去をそのまままばゆい思い出として美化しまうことが多いけれど、わたしは違うわ。
過去を思い出のままにしたくない。
現実に塗り替えてやるの。
それが、どんな形でも。
「――***」
ふるり、と込み上がる熱を逃がさないように彼の名前を口ずさむ。
すると、信号の向こうに彼はいた。
嗚呼あぁぁあア…っ!
ついわたしは熱っぽい視線を送ってしまったのね。
彼がわたしを捉えた。
きゅん。
なんて甘酸っぱいものじゃない。
どくどく。
どろどろ。
血液細胞が沸騰して蒸発することなく煮えていく感覚に背筋が震えた。