揺れる車内に
熱くなる瞳を堪えて
あたしは飴の袋を破いた
「あ…ッ!」
コロン…と音を立てた飴玉は
あたしの指をすり抜けて
回転しながら車内を走り出す
まるであの日みたいに
行き先を失った飴玉が
更に加速して転がり続ける
あたしはそれを見つめながら
初めて飴玉男に会った時の事を思い出していた
『俺の飴……最後の一つだったのにぃ……』
今にも泣きそうな顔をして
転がり続ける飴玉を見つめてた彼
あの時は
まさかスキになるなんて思ってなかった
だけどいくつもの思い出を共に共有して
笑顔の数だけあたしは幸せになった
スキ
その意味を教えてくれたのは
紛れもなく
いつも傍に居た飴玉男だった