「千絵さんから聞いたよ。」
「え……?」
夜の冷たい風が一瞬吹き付けて
舞い上がる髪の毛を手でおさえた
「あの時、裏庭に居たんだね。」
その言葉に
一気に浮かび上がる記憶
また胸が痛んだ
うつ向くあたしに
飴玉男は少しだけ距離を縮めた
「ごめん。嘘でも付き合ってもいいとか言って…」
心が痛い
「でもああするしか…」
「大丈夫。」
飴玉男の言葉を遮るように
あたしは口を開いた
「大丈夫。あれは…あたしの為、だったんでしょ…?」
あたしの為の嘘
わかってるから。
驚いた表情を浮かべた飴玉男は
「ありがとう」と言って
また笑った