つ、疲れた・・・。
私はトレーを持ってぐったりしながらため息をついた。

元々そんなに体力がある方じゃない。

だから、余計に疲れた。


ふと、客席の方に目を向けて見た。

ごっついシルバーのアクセサリーをたくさんつけた人がコーラフロートのアイスをつついて食べている。

見た目とやってることのギャップにかなり驚いた。

そのとき、コーラフロートをつついていた人がこっちを向いた。

「あ、ねぇ君!」

「は、はい!!!」

あまりに突然のことで声が裏返ってしまう。

「そんな緊張しなくても・・・。」

その人はハハハ、と軽く笑った。

いや、不良に声掛けられたらビビります。
私ヒヨコですよチキンですよ。

心の中で呟いた。


「昨日ありがとう。」

そんな恐怖の対象が私に向かって・・・

「あ・・・りがとう・・・って何がですか?」

その人は、キョトンとした顔でこっちを見た。
キョトンとした顔は意外とかわいい。

「ほら、ここ。昨日怪我したの、手当てしてくれたんだよね?」

彼は服の袖を捲くった。
痛々しい擦り傷が顔をのぞかせる。擦り傷は確か水かけて傷口洗っただけだ。
たいしたことはしてないんだけどな。

でも、そんなことでもお礼を言ってくれるなんて、なんだか緊張して損した気がする。
何余計なことしてくれとんじゃ――!!・・・とかは無かった。
私の不良に対する偏見が少し無くなった瞬間だった。

「当たり前のことしただけですよ・・・。」

緊張がほぐれて自然と笑顔になった。

目の前の人の顔がほんのり赤くなる。
熱でもあるんだろうか。

も、もしかして!

「あの、傷口から悪いバイキンとか入っちゃたんでしょうか!?傷口洗い足りなかったですかね!?ご、ごめんなさい!!」

私は勢いよく頭を下げた。

「え、どういうこと?」

彼はまたあのキョトンとした顔になった。
次の瞬間、彼は勢いよく吹き出し、また周りの不良たちも爆笑し始めた。


・・・もう、訳がわからなかった。

私何かしたっけ?