季節は春。
頬を通り過ぎて行くそよ風が私に優しく微笑みかけていた。
満開の桜の樹の下で私は真っ青な大空を見上げ、何か良い事が起きる予感を感じていました。
昨日までの私とは決別し、新しい自分探しの旅が始まるかのように。
家庭崩壊・いじめ・登校拒否・引きこもり・そして、自殺未遂…
絶望のどん底で私が見たものは、遥か遠くに見える微かな光りでした。
あまりにも遠くて小さな光りを、私は両手を思い切り伸ばし必死に掴もうとしていた。
ただ未来だけを信じて。
そんな私を母はいつも優しく見守り続けてくれました。
自分が離婚で大変なのに
「大丈夫、明日はきっといい事あるから!」
いつも前向きで笑顔を絶やしませんでした。
やっぱり家族っていいな。
私はその時つくづく感じました。
そんな母に付き添われて、私は京都市立伏見工業高校の建築科の入学式に出席するのでした。