ルーファスの執務室を出ると、まっすぐ自室へ向かう。


熱い湯に浸かりたいな。



小間使いが湯殿に湯を張ってくれているだろう。



疲れてはいてもさっそうとした足取りだ。



「見て、キース様だわ やっと戻られたのね」



窓ガラスを磨いている侍女たちが廊下を歩くキースを見て言う。



「本当に騎士服がお似合いでいらっしゃるわ」



「あ~ん 一度で良いからあの深いグリーンの瞳に見つめられてみたいわ」



独身でシェルトランド国の中でも高い地位にいるキースは貴族の姫君や城で働く女性たちの注目の的だ。



しかしキースは身近な女性には見向きもせず、身分を偽り街へ出かけ気軽な女性関係を続けていた。



後あと面倒になることは避けたいと思っていたからだ。




§ § § § § §



「キース様がお戻りになられましたよ」



昼寝から目が覚めたクリスにリリアは伝えた。



「ケガはしていないか?」



「そのような話は聞いておりませんわ」



心配そうなクリスに笑みを浮かべる。



なんだかんだと言いながらクリスがキースを気にしているのは女の直感で分かっている。