人が死にかけているのに放っておく女主人ではない。


女主人は急ぎ足で部屋を出た。


外はもう暗闇に染まっていた。


所々の薄暗い外灯が点いているだけだが、まだ道に人通りはあった。


酒場ならば城の騎士が飲みに来ているのではないかと考えたのだ。


城の上級薬師とやらを知っている誰かを見つけなければならない。



§ § § § § §



「あら、パウラおばさん」


街でも一番の居酒屋に入ると、きれいな女性が近づいてきた。


「イザベラ、お前さん 城の騎士か、出入りしている者を知らないかね?」


血相を変えた宿屋の女主人にイザベラは目を丸くした。


「いったいどうしたの?」


「うちに泊まっている子が死にそうなんだよ!」


「死にそう?」


物騒な話だ。


「ああ 腕を切られてそこからばい菌が入り込んだらしい 酷い状態なんだ 城の上級薬師でないと治せないと薬師のモーリオに言われたんだよ」


「腕を切られた?」


「お前さん、誰か知らないかね?」


説明するのももどかしくイザベラに詰め寄る。