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その頃、宿屋のベッドの上でクリスは熱にうなされていた。


誰にも頼る事が出来ずにクリスの具合はどんどん悪くなっていた。


「はぁ……はぁ……っ……」


喉が渇く。



しかし身体を起こすと酷い眩暈に襲われてまともに歩く事ができない。



昨日の短剣の傷が原因だった。


傷口はズキズキと心臓にも届くくらいに酷く痛む。


赤く腫れあがった傷口は膿がたまってきていた。



「っ!……このくらい……っ」


クリスは鞘に収められた剣を杖にベッドからやっとの事で抜け出した。


傷だらけの艶もない床に足を着け、剣を頼りに小さな洗面台へと近づく。


喉が渇いて仕方ないのだ。


腰を屈めて蛇口に口をあて、喉の渇きを癒そうと夢中で飲んだ。