たいくつな貴族の女などごめんだ。



その時、昨日の自分の事を俺と呼ぶ娘を思い出した。



「大丈夫だろうか」



腕の傷口はそれほどでもなかったがあの細腕、かなり痛むだろうに。



しかし変な女だったな……男として育てられたみたいだ。



「キース団長」



背後でカイナンの声がして物思いから我に返った。



「なんだ?」



「え、いえ 練習場で皆が待っています」



なんだ?と上の空で聞かれて口ごもる。



「あ~ そうだったな 今行く」



時間も忘れてあの娘の事を考えていたらしい。



キースは足元に立てかけて置いた剣を手にすると部屋を出た。