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「俺に何を言っても無駄ですよ?イレーヌに頼まれたのでしょうが」


部屋に2人っきりになると先にキースが口を開いた。



「イレーヌは心配しているの」



沙羅は取り付く島のないキースに向かって言う。



「自分を心配した方がいいのに あいつは女で、我国の適齢期をとっくに過ぎている」



「イレーヌはその気になればいつでも結婚できるわ」



美しく聡明なイレーヌ、剣術が長けている事がネックだがそれでも良いと言う男性は少なくない。



この国を支える良家の子女だ。



そして目の前に仏頂面で立っている男も身分に相応しい女性が列を連ねて待っていると聞く。



キースにしてみても、結婚相手はより取り見取りと言ったところなのだ。



「おせっかいはやめて欲しいですね 姫さん じゃあ、俺はこれで失礼します」



キースは深く一礼すると沙羅の返事も聞かずに出て行った。