部屋に戻るとリリアがいて、荷造りをしていた。



もともとクリスの荷物はないも同然で、リリアが荷造りしているのはここへ来てから仕立てられたドレスや宝飾品。



そう言えば……小屋から爺さんの残した宝石を持ってくるのを忘れたな……。



いや、あんなものはない方が良いんだ……。



俺の夫になる男に必要はないはず、王女の俺を嫁がせようとしているんだから、ルーファス国王陛下は金のない男を選ぶはずはない。




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それでも、明日結婚をするとなると怖気づく気持ちになる。



寝静まった頃、クリスは寝台を降りてドアに向かった。



逃げようと思った。



静かにドアを開けた途端に、小さな悲鳴を上げる。



「ひっ……お、お前たち、どうしてそこにいるんだ!?」



ドアには3人のいかつい顔をした大きな体つきの騎士たちが3人いた。



「クリスティアナ様、どちらへお出かけですか?」


「……」



くっそ……逃げ出さないように見張らせるなんて……。



クリスはこれ見よがしに大きなため息を吐くと部屋に入り、ドアを閉めた。



俺が太刀打ちできないような大男を3人も配置させるなんて……きっとキースの仕業だ。



そこまでして結婚させたいのかと思うと、悲しみが広がった。