「な、何をするんだ!」


「何をって 誘っているのよ?」


誘うって何をだ?


俺は困った。


「おい、出て行っちまうぞ」


ひそひそと隣のテーブルで話す声が聞こえた。



席に着いた時、耳にした言葉を思い出す。


「あの男、やっちまうか」


物騒な会話だ。


「ああ、あれだけ飲んでいれば帰りは何をされても抵抗できないぜ」


「羽振りは良いようだから金を盗んで物取りのように見せようぜ まあついでに金があれば俺たちも楽しめるぞ」


赤毛の男を襲う計画だ。


「30分もすれば戻ってくるだろう お楽しみのあと、やつは酒を飲みに戻ってくるはずだ」


またお楽しみ……お楽しみっていったいなんなんだ?とにかく戻ってきてはいけない事を知らせなければ。


小柄な男はポケットから硬貨を取り出すとテーブルの上にじゃらっと置いた。


「あら、もう帰るの?」


俺は返事を返さないまま急いで酒場を出た。