私は遠くから来る
その人影に目を奪われた。
大きな段ボールを抱えた、その人の顔は見えない。
でも長いスラッとした脚
スーツがとても似合う人だった。
段々近づいてくる。
いや、近づいてくるより
歩いてきてるだけ。
なのに、私の鼓動は激しく胸をうつのだ。
顔も見えないあなたに
すれ違いざまに
「すみません、職員室教えて?」
いきなりだった。
「僕、明日からここでお世話になることになってて。担当は数学だよ。あっ、ほら腕の限界…。早く職員室。」
「あっ…。職員室なら、すぐそこの階段上がったところです。」
「ん。了解、ありがとう。気を付けて帰るんだよ」