「それで、何にする、出し物。ケンカだけして帰られてもさ。」
珍しく三人の間に沈黙が走った。その時だ、突然ヒカルが叫んだのだ。
「俺、ギターがやりたい! あれだけは誰にも負けねえ自信あんだよ。」
その声の大きさと、唐突の提案にアラシも、スバルでさえも呆然となった。よく見れば、なんだかヒカルの目は輝いて見えた。
「そうだよ、ギターがいい、そう絶対にさ。」
今度は、そう言いながら無邪気にはね回った。
「ああ、いいんじゃない。俺、キーボードなら出来るぜ。確か天風、ドラム出来たよな。」
と、スバル。彼もまた満足そうにうなずいた。
「え、俺。出来るってほどじゃないよ、前に一度だけ先輩に教えてもらっただけだし。」
「でもお前、去年の学園祭で叩いてなかったっけ。」
「あ、あれは、水谷たちがむりやり…」
ギターにキーボード、ノリノリな二人の横で、アラシは一人賛成出来ずにたじろいでいた。もともと音楽なんかに興味がなく、それこそ去年の学園祭で、友人二人と有志で発表した時に、初めてドラムを目にしたのだ。右も左も分らず、哀れんだ先輩が教えてくれたというわけだ。結局本番ではそれなりに叩けたものの、出来ばえに関しては誰も何も言わなかった。