「涙を堪えながら、私たちは彼女を運びました。屋敷から少し離れたところに、質素ですがお墓も作りました」
憐れな瞳を向けられたくなくて、自分たちの悲しむ姿を面白そうに見る主が許せなくて、絶対に涙は流さないと、三人ともが思っていた。
「シェリーのペンダントは、サイが持っています。彼は彼女のことを……」
そう言って、リオルは口を噤む。
血まみれになったペンダントを握り締め、彼女の胸元に顔を埋め、彼は声を押し殺しながら泣いていた。
その光景を目にしていた二人も、ただただ、胸の中を襲う苦しみに耐えることしかできなかった。
「……三人になった私たちは、その日を境に全く言葉を交わさなくなりました。交わせなかったんです。……いつも、四人一緒だったから」
三人でいると一人になった彼女は寂しがると、彼らは思ったのだ。
「以前よりも苦痛な日々に、私たちは必死に耐えました」
( 生き延びて )
彼女は確かに、そう言ったから。
「それでも、限界がきていたんです」
唇を噛み締め、彼女は手を握り締める。体は僅かに震えていた。
「……私は、主の〝お気に入り〟でした。私は、誰かを真似ることが、上手だったから」
一度その誰かの口調や癖、雰囲気を目にするだけで、いとも簡単に、そして完璧に、真似することができてしまう。
「私は主と共に、何度も貴族の間で行われる晩餐会にいきました。そして主は私と彼が気に入った貴族の方を会わせるのです」
元主であるその男は自分の気に入った女を、自分に従わせるのが非常に好きだった。
けれど相手は貴族。そう簡単に奴隷にはできない。
「……理由は、言わなくてもわかりますよね」
その言葉に、ウィズは何も言うことができなかった。