足を湯に浸かせると、波立つ音がやけに大きく聞こえた。
そのままリオルは胸元まで浸かる。

水面に映る、彼女の顔。

「いっそ、頬を切り裂いて、えぐり取ってしまおうか」


フッ、と彼女は鼻で笑う。
それはまるで、己を嘲笑うかのように。


この烙印がある限り、あの男から完全に逃れることは出来ない。
ずっと、見つからないように。びくびくしながら生き続けなければいけない。

見つかってしまい、また連れ戻されてしまうのならば、この烙印を、えぐり取ってしまいたい。

それが出来るのならば、どんなに顔が醜くなろうと、かまわない。

「…………」

切れてしまうほど強く、唇を噛み締めて、水面を叩きつける。

水飛沫が髪を、そして顔を濡らす。
頬を伝って零れ落ちる水滴は、まるで泣いているかのようだった。