千波を見ると、『テキトーに進めて』と、男の後ろで口パクをしていた。


「…離せ」



「…仕方ねぇな」



そう言って、歩きだそうとしたら、いきなり腕をつかまれた。



「慶…?」



「………は?」



「慶だろ?え、マジ?」



「お前…」



誰だっけ。
でも、相手は俺のこと知ってるんだし…。



「龍平。覚えてない?」



「…あ…」



確か、京都の高校で一緒のクラスだったやつ…。

3ヶ月しかいなかったのに、よく覚えていたな。