「お邪魔します」



リビングに入ると、千波達の親父さんがいた。

どう切り出そうか。


震える千波の手を強く握って、親父さんの目の前で正座した。



「えーと…君は?」



「千波さんの知り合いの笹河慶です」



「笹河……おや?君は美月の息子じゃなかったかな?」



「美月をご存知で?」



「あぁ。いや、随分男前に!千波、お前の彼氏にいいじゃないか!」



美月も知ってるし、俺のことを知ってる?



「お父さん…」



「ん?」



「あたし、妊娠してる」



時間が止まったかのようだった。


誰も動かずに、千波をじっと見ていた。


麻波は、ありえないとでも言うような顔で俺を見た。