千波が寝ているのに、ここで泣いたら確実に起こすよな。

俺は必死に瞼を押さえた。


痛い。
痛いけど、今泣いたらきっと、また千波に甘えることになる。


これ以上、迷惑をかけられない。




「…笹河…さん?」




パッと千波を見ると、寝ぼけながら俺を呼んだ。



「どうした?」



なるべく自然に言ってみた。
ばれないように、いつもの笑顔で。



「ううん…何か変な夢見ちゃって」



「そうか。ほら、買ってきたから…飲め」



ジュースを渡すと、不思議そうに俺を見てきた。


何だか、こいつにはすべてを見透かされているようだ。