キスされた。


俺は無意識に唇を腕で拭いた。

汚いとか、そんなんじゃなくて。



「ごめんなさい」



「…」



無言でいると、美紀は立ち上がって出ていった。

俺は床に座った。



キスしたり、誰かと指が触れるだけで、思い出す。


溢れるんだ。




この想いを誰かが消し去ってくれないか、考えていた。



呼吸するほど嫌になる。
生きることが面倒になる。


こんなに溢れるなんて思いもしなかった。


『好き』だと。


やっぱり。



しばらくは変われなそうだ。