阿波がクスッと笑って、鍵を俺に投げた。


車のキーか。



「お前に言われなくてもそうするが、手は出すかもな…」



そんな度胸、お前にあるのか?

どうせ、指一本も触れないくせに。


紀一は、阿波に近づいた。



「慶ちゃんと、組長さんに手だしたら許さねぇからな?」



真面目な顔したかと思えば、またアホな顔して俺の髪の毛をぐしゃぐしゃにした。



「…じゃあな」



「ふん……じゃあなっ」



こいつと、これから長い付き合いになるとは思いもしなかった。


いや、これで会うことはないと思っていたからだ。


いつでも会いに来いと言ったが、あいつも馬鹿じゃない。

そんなのは社交辞令みたいなもんだと受け取ったはずだ。