「悪い」


「いえ……あっ、本…」



キョロキョロとしている女。


本?

…あぁ。『東京マップ』という本が落ちていた。



「これ?」



「ありがとうございます!これなかったら、帰れませんでした」



そう言って、嬉しそうに本を抱きしめていた。


俺の心臓がドクッと動いた。


…?



「あ、じゃ…本当にありがとうございましたぁ!」



走っていく後ろ姿。

俺は見つめていた。





変わる日がやってきた?


まさか。



早過ぎる。



しかも、もう二度と会えないだろう。