必死に逃げて、空の後ろに隠れた。

「空の前で、んなこと言えるか?」


「慶ちゃん…抱いて!」


言いやがった。

馬鹿だろ、お前。

もしかして、マジであっち系!?


「仲良しですね」


のんびりと言った空。

ジリジリと近づいてくる紀一に熱い視線を送っている。


「お前、マジで面倒なやつだな」



抱き着いてくる紀一の頬をつねった。

逃げても逃げても、抱き着いてくる。


野郎に抱き着かれても嬉しくねぇよ!


「笹河さん」



「ん?」



「絶対、幸せになって下さいね。あ、それと…」



俺の腕をつかんで、ぐいっと引っ張られた。

そして、頬にキスをしてきた。


「じゃあ、これから紀一さんと買い物するんで……またね、笹河さん」



紀一と手を繋いで、走り去った空。


俺は、しばらく固まっていた。


いや、揺れてないから。