どうして、龍平は蒼空を選んだ?

あの時、あいつは千波しか知らなかったはずなのに。


お前は、もう隣にいなかったのに。



「くそっ…」



龍平のアパートに着くと、蒼空は倒れていた。

縄で結ばれていた様子もなく、ただ眠っているだけだった。


「蒼空!」


起こそうとしたが、起きそうにもない。

寝言では…。


「笹河さん、あんた馬鹿だねぇ…」


なんて憎たらしいことを。

このまま海に連れてって沈めるぞ、コラ。


……でも、よかったんだよな…。


足に力が入らなくて、立ち上がれなかった。

ただ、蒼空を抱きしめた。