「ねぇ、兄さん」
 返事は、ない。
「お話、してよ」
 優しかった兄の声は、返ってこない。
「なんで……なんで、返事してくれないのよ……」
 兄の目は、開かない。

「なんで、死んじゃったのよ……」

 その夜、私は泣いた。
 兄が亡くなってからずっと、時間が止まっていたかのように流さなかった涙。
 兄はもう、亡くなったのだという現実を、私は初めて受け入れた。