「……ふぅ……」
私、風早 南智-カザハヤ ナチ-は、公園のベンチに一人、腰掛けていた。
冷たい風が当たらないよう、首に巻いたマフラーに顔をうずめる。

――どうして、こんなことに……


凍えるような寒空の中。
こんな日は、家の中で暖房に当たり、ぬくぬくと過ごしたい、というのが本音。

でも、それは叶わない願いだった。


帰りたくても、帰れない。
……いや、正しくは、“入れない”だ。


「コンビニ、寄らなきゃ良かったなぁ……」

学校帰り、温かい肉まんに誘われて、コンビニに立ち寄った。
その時……だろう。

家の鍵を、落としてしまった。