撃たれた足もすっかりよくなった。

ポケットに片手を突っ込んで、片手は取材ノート。

九重 颯太は今日も忙しそうにスクープを追っている。

人混みを縫いながら街中を歩いていると。

「ちょっとそこ行く男前さん」

一人の女性に呼び止められる。

…通りの片隅、紫のドレスを纏い、ヴェールで口元を覆った占い師が、テーブルの前に座っている。

「…どうだい、儲かってるかい?」

それが小野寺 深幸だとすぐに気づき、颯太は笑顔を浮かべて歩み寄った。

「駄目ね、みんな占いする心の余裕もないみたい」

苦笑しながら、深幸は淡い色の髪の毛を片手で肩から払った。

その魅力的な仕草は、一年前よりも磨きがかかったように思える。

大アルカナを鮮やかな手捌きでシャッフルして。

「一枚引きなさいな」

深幸は颯太の前に差し出す。

断る理由などある筈もない。

颯太は迷いなく一枚引く。

「…相変わらず強運ね」

そのカードに、深幸は思わず目を細めた。

『運命の輪』のカード。

意味は、『幸運』『転機』『向上』…。