この家でもまた、朝の準備に追われていた。

「雄大、ハンカチ持った?ティッシュは?ほらぁ、ボタン掛け違えてる!」

自分の準備もそこそこに、純は息子の雄大の世話にかかりっきりだ。

「今日から小学校なんだからね。先生に名前呼ばれたら、元気よく返事するんだよ?」

「うん、ママ」

頷く雄大に。

「またぁ」

純はコツンとやった。

「『ママ』は卒業だって言っただろ?」

「あ。そか。ごめんお母さん」

真新しいランドセルを背負って、雄大は鼻の下を擦った。

「さてと」

純もまた、普段着慣れないスカートを身につける。

男勝りな彼女も、今日は息子の入学式の晴れ姿だ。

お淑やかにしていられるかしら…。

鏡の前で、一抹の不安を感じるのだった。