丸腰のまま、鬼島はヘリを降りた。

目の前に立つのは、最早人間とは呼べない姿となってしまった榛原の、見るも無惨な姿。

「榛原」

後悔するように俯き、鬼島は小さく声を上げる。

「許せ榛原…俺が救うべきだった。俺がお前を殴り飛ばしてでも引き止めていれば、榑市の災厄もお前の行為も、防げたかもしれないのに…」

彼の言葉ももう届かない。

饐えた息と共に呻き声を上げる榛原の白濁した眼に映るのは、かつての同胞だった男。

今はもう、『食えるか食えないか』。

それだけの判断でしか物事を考えられない。

人で無き者と化した元同僚の姿は、あまりにも憐れだった。