その操縦桿を傾けようとして。

「……!」

思わず鬼島の動きが止まる。

「…どうしたのかしら。あまり時間はないんじゃないの?」

彼の横顔を見る深幸。

鬼島の視線は、ヘリの外へと向けられていた。

…駐機場の滑走路。

そこを、ノロノロと一体のゾンビが歩いていた。

普通のゾンビよりも少々大柄。

身長は2メートル近い。

体格からして、生前は相当鍛え込んでいたのだろう。

肩幅も広く、ガッチリとした体型だ。

それもゾンビ化した今となっては腐敗し始め、劣化して皮膚も爛れ始めている。

「ゾンビなんて放っておけよ。ヘリで逃げちまや関係ねぇだろ」

呟く天坏。

しかし。

「いや…待て」

颯太が驚愕の表情を見せた。