「そ、そんな…!」

絶望したように声を上げる奏。

ヘリは脱出に必要不可欠なのだ。

この扉を開けない事には脱出できない。

また、別の場所でヘリを探すには時間がなさ過ぎる。

「手伝ってくれ!」

鬼島が扉の取っ手に手をかけ、力任せに開こうとする。

「ぼ、僕も~」

山田も鬼島に手を貸すが、扉はびくともしない。

足の痛みを堪え、颯太もそれに加わるが結果は同じだった。

「こ、ここまでなの…?」

悔しげに歯噛みする純。

その時。

「どきな」

突然何の前触れもなく、一人の男が彼らに割って入った。

長髪を後ろで括ったサングラスの男は、ツナギのポケットからおもむろにキーピックを取り出し。

「ほらよ」

僅か数秒で格納庫の施錠を開いてしまった。

「あら…鮮やかな手捌きねぇ」

こんな状況下でも緊張感なく深幸が言う。

「当然だろ」

その男…天坏 凪はフンと鼻を鳴らした。

「俺に開けられない鍵はねえんだよ…心の鍵を除けばな」