最早猶予は幾らもなかった。

ハンヴィーに乗れるだけ乗る。

本来6人乗りのハンヴィーだ。

7人も乗れば寿司詰めの状態となる。

「俺とゴロウはいい」

鬼島がアサルトライフルを握り締める。

「俺達は走って後を追う。あんた達は先行してくれ」

「えっ?でも…!」

純が戸惑う。

「前方から襲ってくるゾンビ達を銃撃なり轢くなりして排除してくれればそれでいい。長距離の行軍は自衛隊の訓練で慣れている」

鬼島に賛同するように、ゴロウも一声吠えた。

それにのんびりしている暇もない。

「っ!」

路地裏から、建物の陰から。

次々とゾンビ達が姿を現し始める。

数少ない生存者である鬼島達の声を聞きつけて、集まり始めたのだ。

「さぁ、いくぞ!」

走り始める鬼島とゴロウ。

「仕方ないわね」

純が奏に目で合図する。

「はい、鬼島さん達が振り切られないようにスピードを抑えていきます」

そう言って奏はアクセルを踏んだ。