榑市の大惨事の元凶たる榛原 保はこうして命を落とした。

しかし生存者達は知らない。

…榛原は、本人も知らないうちに政府の人間によって、発信機をつけられていた。

その所在地や行動を逐一監視できる発信機。

それらの情報は、全て『黒幕』へと伝えられる。

その生死さえも…。

都内某所。

その発信機の信号が途絶え、榛原が死亡した事が伝えられる。

それは改良型寄生虫回収任務の失敗をも意味した。

「チッ…榛原め、使えん奴だ…」

上等な仕立てのスーツを着たその男は苦々しく呟いた後、すぐに電話を手に取った。

「……もしもし。ええ、私です…申し訳ありません、回収に失敗しました…」

男はそれまでの横柄な態度から一転、慇懃な態度で受話器の向こうの相手に言う。

「はい、はい…核ミサイルの発射準備をお願いします。榑市もろとも生存者と証拠の隠滅処理を…」