榛原が、対峙している鬼島達さえもが、深幸の飄々としたペースに巻き込まれてしまっている。

彼女の持つ不思議な雰囲気と話術によって、完全に掌握されてしまっていた。

「ほら、一枚引いてみなさいな。あなたにその度胸があるならね?」

銃を突きつけられておきながら相手を挑発するなど、本来なら愚の骨頂。

しかし深幸によって榛原は完全に操り人形と化してしまっている。

「嘗めるなよ、女!」

まんまと挑発に乗り、榛原はタロットを一枚引き。

「っ…!!」

その顔が一気に青ざめた。

カードに描かれていたのは、大きな鎌を持つ黒装束の骸骨の絵。

『死神』のカード。

「これはこれは…」

深幸が微笑を浮かべる。

…彼女の微笑みは実に不思議だ。

見る者を魅了し、穏やかな気持ちにさせる反面、心暗い者に対しては戦慄するほどの悪寒を感じさせる。

まさしく魔性の笑み…!

「死神のカードの意味は、『停止』『損失』そして、『死と再生』…」